傷病手当金が終了…でも働けない。次に取るべき5つのステップ【完全版】

この記事を読んでいるあなたは、1年6ヶ月という長い期間、病気やケガの治療に専念されてきたのだと思います。本当にお疲れ様です。
そして今、「もうすぐ傷病手当金の支給が終わる。でも、まだ働ける状態じゃない…」「来月から収入がゼロになる。どうやって生活していけばいいの?」と、崖っぷちに立たされたような、強い不安と焦りを感じているのではないでしょうか。
僕も休職が長引いた経験があるので、その息が詰まるような気持ち、痛いほどわかります。
でも、どうか希望を捨てないでください。先に結論からお伝えします。
この記事の結論
- 傷病手当金の受給期間(最大1年6ヶ月)は、原則として延長できません。
- でも、いきなり収入がゼロになるわけではありません! 次にあなたが使える公的な制度がちゃんと用意されています。
- まず、何よりも先にやるべきことは、ハローワークで失業保険(雇用保険)の「受給期間延長」の手続きをすることです。
- 他にも、障害年金や自立支援医療など、あなたの状況に応じて利用できるセーフティーネットがあります。
- 焦らなくて大丈夫。この記事で、あなたが次に何をすべきか、一つずつ丁寧にご案内します。
「もう終わりだ…」と絶望する必要は全くありません。傷病手当金の終了は、ゴールではなく、次のステージに進むための「移行期間」の始まりです。一緒に乗り越えていきましょう。
まず確認:あなたの傷病手当金、本当に「満了」ですか?

「もうすぐ1年6ヶ月経つから…」と思っているあなた、少しだけ待ってください。2022年1月から、傷病手当金のルールが少し変わったのをご存知ですか?
「通算1年6ヶ月」のルールを確認しよう
昔の制度では、傷病手当金の支給開始日から「暦の上で1年6ヶ月」経つと、途中で復職した期間があっても、そこで支給は打ち切りでした。
しかし、今は「実際に支給された日数が、合計で1年6ヶ月になるまで」というルールに変わっています。
【図解:傷病手当金の通算化イメージ】
(例)うつ病で休職したAさんの場合
① 2024年4月1日~9月30日(6ヶ月間): 傷病手当金を受給
→ 支給残日数:1年
② 2024年10月1日~12月31日(3ヶ月間): 体調が回復し、一度復職(この間、傷病手当金は不支給)
→ 支給残日数は減らない!
③ 2025年1月1日~: 再び症状が悪化し、再休職
→ 残りの1年分の傷病手当金を、続きから受給できる!
もし、あなたが途中で一度でも復職した期間があるなら、まだ受給期間が残っている可能性があります。念のため、ご自身の健康保険組合や協会けんぽに問い合わせて、支給状況を確認してみましょう。
出典:全国健康保険協会 令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます
【ステップ①】会社との関係をどうするか決める(在籍 or 退職)

傷病手当金の満了が近づくと、会社から今後の意向について連絡が来ることがあります。ここで、「在籍し続ける」か「退職するか」の判断が必要になります。
在籍を続ける場合(休職期間がまだ残っている)
会社の就業規則で、休職できる期間が傷病手当金をもらえる期間(1年6ヶ月)よりも長く設定されている場合があります。(例:最大2年まで休職可能など)
- メリット:厚生年金・健康保険を継続できる。社会復帰へのハードルが低い。「戻る場所がある」という安心感。
- デメリット:休職中は無給になるが、社会保険料の自己負担分は支払い続ける必要がある。
退職を決断する場合(休職期間満了)
多くの会社では、休職期間の満了=「自然退職」または「解雇」扱いとなります。これは就業規則によって定められています。
- メリット:会社との関係を一度リセットし、治療に専念できる。国民健康保険・国民年金に切り替わり、前年の所得によっては保険料が安くなる場合がある(減免制度あり)。
- デメリット:「戻る場所」がなくなる。退職手続きが必要になる。
焦って決めないで!
どちらが良いかは、あなたの体調と会社の制度次第です。すぐに決められない場合は、人事担当者に「今後のことについて、もう少し考える時間をいただけますでしょうか」と正直に伝えましょう。
【ステップ②】最優先で!失業保険の「受給期間延長」手続きをしよう

もし退職する、あるいは退職せざるを得ない状況になった場合、この手続きだけは絶対に忘れないでください。
それが、ハローワークで行う失業保険(雇用保険の基本手当)の「受給期間延長」です。
なぜ「延長」が必要なの?
通常、失業保険は「働きたい意思と能力があるのに、仕事が見つからない人」のための制度です。
しかし、今のあなたは「病気やケガのため、まだ働けない」状態ですよね。
このまま何もしないと、失業保険をもらえる権利が、退職日の翌日から1年で時効のように消えてしまいます。
そこで、「今はまだ働けないので、働けるようになるまで、もらう権利をキープさせてください!」と申請するのが、この「受給期間延長」なのです。最大で3年間延長でき、元の1年と合わせて合計4年間、権利を保持できます。
手続きの方法と必要書類
手続きは、あなたの住所を管轄するハローワークで行います。
項目 | 内容 |
---|---|
いつまでに? | 退職日の翌日から30日が過ぎてから、1ヶ月以内が原則です。 (つまり、退職後31日~60日の間。過ぎても申請できる場合があるので、諦めずハローワークに相談してください) |
どこで? | あなたの住所を管轄するハローワークの「雇用保険給付課」 |
必要なものは? | ① 離職票-1、離職票-2(会社から送られてきます) ② 受給期間延長申請書(ハローワークの窓口やサイトで入手) ③ 働けないことを証明する書類(医師の診断書、傷病手当金支給決定通知書のコピーでも可) ④ 本人確認書類、印鑑など |
出典:ハローワークインターネットサービス 病気・けが等のために仕事につけない場合
この手続きさえしておけば、数年後、あなたが元気になって「さあ、働こう!」と思った時に、失業保険を受け取りながら、安心して次の仕事を探せます。
【ステップ③】失業保険に切り替えるタイミング

無事に延長手続きが終わったら、あとは治療に専念します。
そして、医師から「そろそろ軽い仕事なら始めても大丈夫ですよ(就労可)」という許可が出たら、いよいよ失業保険の受給手続きをスタートさせます。
ハローワークに行き、「受給期間の延長を解除して、失業保険の受給手続きをしたい」と伝えます。
そこから、求職活動を始め、失業保険を受け取ることになります。
ここで一つ、嬉しいポイントがあります。
通常、自己都合で退職すると、失業保険をもらうまでに2ヶ月間の給付制限(待機期間)があります。
しかし、あなたのように病気やケガが理由でやむを得ず退職した場合は、「正当な理由のある自己都合退職」と判断され、この給付制限がなくなります。7日間の待期期間のみで、すぐに給付が始まる可能性が高いのです。
【ステップ④】失業保険以外のセーフティーネットを知っておく

「失業保険がもらえるのは分かったけど、それまでの生活が不安…」という方のために、他にも利用できる制度をご紹介します。
障害年金
病気やケガによって、日常生活や仕事に著しい制限がある場合に受給できる可能性がある年金制度です。傷病手当金と同時にもらうことはできませんが、傷病手当金が終わるタイミングで切り替えを検討できます。
- 条件:初診日から1年6ヶ月が経過していること、年金の納付要件を満たしていることなど。
- 相談窓口:お近くの年金事務所、または専門の社会保険労務士
自立支援医療制度
メンタル不調(うつ病、適応障害など)で継続的な通院が必要な場合、医療費の自己負担額が通常3割のところを、1割に軽減できる制度です。これは必ず申請しておきましょう。
- 相談窓口:お住まいの市区町村の役所(障害福祉課など)
生活保護
あらゆる制度を使っても、なお生活が困窮する場合に利用できる、最後のセーフティーネットです。
- 相談窓口:お住まいの市区町村の福祉事務所
【体験談】傷病手当金が終わった後、みんなはどうした?
体験談①:退職→失業保険延長→1年後に再就職したAさん(30代・男性)

「傷病手当金が終わるタイミングで退職。すぐにハローワークで延長手続きをしました。そこから1年間は本当に何もせず、治療に専念。収入は貯金を切り崩していましたが、『失業保険がある』という安心感が大きかったです。1年後、無事に回復し、失業保険をもらいながら転職活動。ブランクを理解してくれる会社に再就職できました。」
体験談②:障害年金に切り替え、自分のペースで働き始めたBさん(40代・女性)

「初診日から1年6ヶ月が過ぎていたので、社労士さんに相談して障害厚生年金3級を申請。無事に受給が決まり、生活の基盤ができました。会社は退職しましたが、障害年金という安定収入があるおかげで、焦らずに週3日のパートから社会復帰を始められています。」
体験談③:実家に戻り、失業保険をもらいながら再起したCさん(20代・女性)

「一人暮らしでの闘病は経済的にも精神的にも限界でした。傷病手当金が終わるのを機に退職し、実家に戻ることを決意。親のサポートを受けながら療養し、半年後に就労許可が出たのでハローワークへ。給付制限なく失業保険をもらえたので、金銭的な不安なく次の仕事を探せました。」
焦らないで。あなたの市場価値はゼロじゃない

1年半もの間、社会から離れていたことで、「もう自分はどこにも雇ってもらえないんじゃないか」「キャリアが終わってしまった」と、自己肯定感が地の底まで落ちているかもしれません。
その気持ち、本当によくわかります。
でも、断言します。あなたの価値は、決してゼロにはなっていません。
むしろ、この長い療養期間は、あなたが「自分を大切にすること」を学んだ、かけがえのない時間だったはずです。
限界まで頑張ってしまう人の気持ちがわかる。心に寄り添うことができる。それは、同じ経験をしたあなたにしか持ち得ない、新しい「強み」です。
体調が少し上向いて、「そろそろ、次のことを考えてみようかな」と思えた時。その時は、一人で戦おうとしないでください。
いきなり履歴書を書いたり、面接を受けたりする必要はありません。
まずは、リクルートエージェントのような転職のプロに、今のあなたの状況を話してみることから始めてみませんか。
「ブランクがあっても大丈夫ですよ」「あなたのこの経験は、こういう業界で活かせますよ」と客観的なアドバイスをもらうだけで、閉ざされていた視界がパッと開けるはずです。
登録だけなら無料です。社会との繋がりを取り戻す、最初の一歩として、頼れる味方を見つけておくのは、とても良い方法ですよ。
まとめ

最後に、今日の話をまとめます。傷病手当金が終わっても、あなたは決して一人ではありません。
- ✅ まずは傷病手当金の受給期間が「通算」で1年6ヶ月に達しているかを再確認。
- ✅ 退職する場合は、何よりも先にハローワークで失業保険の「受給期間延長」手続きを行う。
- ✅ 体調が回復したら、延長を解除して失業保険を受給開始。病気理由の退職なら給付制限なしの可能性大。
- ✅ 失業保険以外にも、障害年金や自立支援医療などのセーフティーネットがあることを知っておく。
- ✅ 焦って未来を決める必要はない。まずは体調を整えることが最優先。
- ✅ あなたの療養経験は、決して無駄ではない。それは新しい「強み」になる。
今は、人生の長い夏休みのようなものだと思ってください。
無理せず、焦らず、あなたのペースで。応援しています。