【図解】傷病手当・失業保険・再就職手当の違いは?貰える順番と条件

「休職や退職を考えているけど、傷病手当とか失業保険とか、種類が多すぎて何が何だか…」「自分はどれをもらえるの?」「どういう順番で手続きすればいいの?」
この記事を読んでいるあなたは、いざという時のためにお金の制度を調べてはみたものの、専門用語のオンパレードに混乱し、途方に暮れているのではないでしょうか。
先に結論からお伝えします。これらの複雑に見える手当は、あなたの状況に合わせて順番に受け取れる、人生のセーフティーネットです。
この記事の結論
- これらの手当は、状況に応じてもらえる順番が決まっています。基本の流れは ①傷病手当金 → ②失業保険 → ③再就職手当など です。
- 同時にもらうことはできませんが、バトンを繋ぐように、途切れることなくあなたを支えてくれます。
- ざっくり言うと、
傷病手当金 → 病気やケガで「働けない」時のお金
失業保険 → 元気になったけど「仕事がない」時のお金
再就職手当など → 早く「仕事が決まった」時のお祝い金 - この記事の「お金のロードマップ」を見れば、あなたが今どこにいて、次に何をすべきかが一発でわかります。
一目でわかる!休職から再就職までの「お金のロードマップ」

まず、全体像を掴みましょう。あなたがこれから進む道のりと、それぞれのタイミングでもらえるお金を図にしました。
休職から再就職までの「お金のロードマップ」
START:在職中(心身の不調…)
① 働けない時 → 傷病手当金
まずは休職。治療に専念するための生活費を確保。
② 退職を決断 / 休職期間満了
傷病手当金は退職後も継続して受け取れる場合があります。
③ 仕事を探す時 → 失業保険(基本手当)
体調が回復したら、生活費の心配なく転職活動を開始。
※まだ働けない場合は「受給期間延長」の手続きが必須!
④ 早く再就職できた時 → 再就職手当など
失業保険が残っているうちの再就職で、お祝い金GET!
GOAL:新しい人生のスタート!
どうでしょうか?こうして見ると、自分が今どの段階にいて、次は何というお金をもらうのか、イメージが湧いてきませんか?
※(参考)もう少し範囲を広くしたロードマップはこちら↓
[開く]もらえる手当ロードマップ(完全版)
もらえる手当ロードマップ(完全版)
【フェーズ1:療養期】
► 傷病手当金
「働けない」状態の生活費を保障。退職後も継続できる場合があります。
【フェーズ2:移行期】
► 失業保険の受給期間延長
「まだ働けない」場合、失業保険の権利をキープする最重要手続き。
【フェーズ3:転職活動期】
► 失業保険 + 転職サービス
「働ける」状態になったら、失業保険で生活を支えつつ転職活動を開始。ハローワークと並行してリクルートエージェント等を活用し、効率的に次の仕事を探します。
【フェーズ4:再就職決定期】
► 再就職手当など
失業保険の支給日数を残して早く再就職が決まると、お祝い金がもらえます。
【フェーズ5:定着期】
► 就業促進定着手当
再就職手当をもらった人限定。新しい職場での定着をさらに支援する手当です。
ここからは、各ステップをもう少し詳しく見ていきましょう。
【STEP1】病気やケガで「働けない」あなたを支える『傷病手当金』

まず、あなたが心身の不調で仕事を休む時に、一番最初の味方になってくれるのが「傷病手当金」です。
どんなお金? | 業務外の病気やケガで働けない時に、あなたと家族の生活を守るためのお金。 |
誰がもらえる? | 会社の健康保険に加入している本人(被保険者)。 ※アルバイトやパートでも、社会保険に入っていれば対象です。 |
いくら、いつまで? | ざっくり言うと、あなたの給料の約3分の2が、最大で通算1年6ヶ月もらえます。 |
注意点は? | ・国民健康保険の人は、原則もらえません。 ・失業保険とは同時にもらえません。「働けない」状態でもらうのが傷病手当金です。 |
まずはこの制度を使って、給料の心配をせず、安心して治療に専念することが最優先です。
【STEP2】元気だけど「仕事がない」あなたを支える『失業保険(基本手当)』

傷病手当金のおかげで無事に回復!でも、元の会社には戻れない/戻りたくない…。そんな時に、次の仕事が見つかるまであなたを支えるのが「失業保険」です。
【豆知識】「失業保険」と「失業手当」は同じ?
はい、基本的には同じものを指します。正式名称は「雇用保険の基本手当」ですが、一般的には「失業保険」や「失業手当」という呼び名で広く知られています。
どんなお金? | 働く意思と能力があるのに仕事が見つからない時に、次の仕事を探す間の生活を支えるお金。 |
誰がもらえる? | 雇用保険に加入していて、原則として退職前の2年間に12ヶ月以上働いていた人。 |
いくら、いつまで? | 離職前の給料や年齢、勤続年数によって変わりますが、給料の約50%~80%が、90日~360日間もらえます。 |
超重要ポイント! | 退職後、まだ体調が戻らず「働けない」場合は、すぐにはもらえません。 その場合、ハローワークで「受給期間の延長」という手続きをしないと、もらえる権利が消えてしまいます! |
>> 参考記事:傷病手当金が終了…でも働けない。次に取るべき5つのステップ
【STEP3】早く仕事が決まったあなたへの「お祝い金」制度

失業保険をもらいながら転職活動を頑張った結果、給付期間をたくさん残して再就職が決まった!そんなあなたには、国から「おめでとう!」のお祝い金(=就職促進給付)がもらえます。
ここが一番ややこしいポイントですが、主に3種類あります。あなたに関係が深いのは、おそらく上の2つです。
手当の名前 | 一言でいうと? | もらえる主な条件 |
---|---|---|
① 再就職手当 | 早く仕事が決まった ご褒美金 |
・失業保険の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること。 ・安定した職業に就いたこと。 |
② 就業促進定着手当 | 新しい職場で定着した ご褒美金 |
・再就職手当をもらった人が対象。 ・再就職先で6ヶ月以上働き、その間の給料が離職前より低いこと。 |
③ 常用就職支度手当 | 就職が難しい人のための 特別なお祝い金 |
・障害のある方、45歳以上の中高年齢者など、就職困難者が対象。 ・失業保険の残日数が3分の1未満など、再就職手当の対象にならない場合。 |
【職種別】みんなはどう乗り越えた?お金の制度活用体験談

体験談①:ITエンジニア(30代男性)
「燃え尽き症候群でうつ病になり、傷病手当金を1年半ほぼ満額受給しました。退職後はすぐに失業保険の延長手続きをし、半年間はプログラミングから離れてリフレッシュ。体力が戻ってから失業保険に切り替え、3ヶ月で転職先が決定。支給日数が90日以上残っていたので、まとまった額の再就職手当がもらえ、新しいデスク環境を整える費用に充てられました。」
体験談②:公立学校の教師(40代女性)
「保護者対応で心を病み、適応障害に。公務員なので傷病手当金(傷病手当)を受給し1年間休職しましたが、復帰は難しいと判断し退職。公務員は雇用保険に入れないので失業保険はありませんでしたが、退職手当(退職金)を生活費に充てながら療養しました。その後、経験を活かして民間の教育機関に再就職。制度は違えど、休む期間は本当に大事だと感じました。」
体験談③:営業職(20代女性)
「新規開拓のプレッシャーで3ヶ月休職し、傷病手当金をもらってから退職。まだ働ける状態ではなかったので、ハローワークで失業保険の延長手続きをしました。半年後、体調が安定したので延長を解除し、失業手当をもらいながら転職活動。未経験の事務職に早く内定が出たので、再就職手当を受給。さらに半年後、前の営業職より給料が下がったので就業促進定着手当も申請。ダブルで手当がもらえ、生活の立て直しに本当に助かりました。」
どの手当ても、あなたの「次の一歩」を応援する制度

ここまで読んで、「手続きが面倒くさそう…」「自分が本当にもらえるか不安…」と感じたかもしれません。
でも、忘れないでください。これらの制度は、あなたがこれまで一生懸命に保険料を納めてきたからこそ使える、正当な権利です。誰に遠慮する必要もありません。
休んだり、会社を辞めたりすることは、決して「逃げ」や「負け」ではありません。合わない靴を無理に履き続けて足を血まみれにするより、一度立ち止まって、自分にピッタリの靴を探すほうが、ずっと賢明で、素晴らしい選択です。
これらの手当は、あなたが新しい靴を探すための「時間」と「心の余裕」をくれる、最大の味方なのです。
そして、新しい靴(仕事)を探すとき、ハローワークだけでなく、民間の転職サービスを併用するのが、今の時代の賢いやり方です。
特に、休職からのブランクがあったり、体調に不安があったりする中での転職活動は、一人だと心が折れそうになることもあります。そんな時、リクルートエージェントのような転職のプロに相談すれば、あなたの状況を理解した上で、客観的なアドバイスや、あなたに合った求人を紹介してくれます。
情報収集のつもりで気軽に話を聞いてみるだけでも、「自分にはこんな選択肢もあるんだ」と、視野がぐっと広がりますよ。
まとめ

最後に、複雑な手当の関係性をもう一度、シンプルにまとめます。
- ✅ 【働けない時】は、会社の健康保険から「傷病手当金」。
- ✅ 【仕事を探す時】は、ハローワークで「失業保険(基本手当)」。
- ✅ 【早く仕事が決まった時】は、ハローワークから「再就職手当」などのお祝い金。
- ✅ これらはバトンリレーのように順番にもらえる制度で、同時受給はできない。
- ✅ 最重要ポイントは、退職後まだ働けないなら、失業保険の「受給期間延長」手続きを絶対に忘れないこと!
制度を正しく理解することは、あなた自身を守る最大の武器になります。この記事が、あなたの次の一歩を、少しでも軽くするものであれば嬉しいです。